2026年1月12日月曜日

ショアのメッセージ 1

アラン・ショア著、小林隆児訳(2025)「精神療法という技法の科学」Allan Schore (2012)The sciene of the Art of Psychotherapy. W. W. Norton & Company.を正月の間少しずつ読んでいる。(実は書評を依頼されているからだ。トホホ。)そして彼の言うパラダイムチェンジを少しずつ分かりかけているところだ。それをトラウマと解離という文脈からまとめてみる。 トラウマ関連障害に関する脳科学的な知見が増すにつれて、トラウマが脳および心に及ぼす影響に関する新たな理解が得られるようになって来ている。PTSDと解離症を結ぶ研究として注目されるのが、妊娠後期からの愛着期における右脳の神経回路の発達およびそれが愛着トラウマにより阻害された場合に生じる精神医学的な症状の表れである。その結果PTSDと解離はトラウマ反応という一つの現象の二つの側面という理解がなされるようになってきている。少なくとも両者を個別のものと理解して治療する意味は少なくなってきているのだ。ショアは右脳の高次右脳(眼窩前頭皮質)と皮質下右脳(扁桃体)の連携が愛着の時期に形成されることの重要性を説き、それが阻害されることで交感神経系の過活動と背側迷走神経系の過活動がそれぞれ生み出す病理としてのPTSDと解離状態を説明する。このうち前者の過活動が優勢な場合にPTSD(非解離型)、後者が過活動の場合に解離症という表れ方をとる。要はアクセルとブレーキの両方を踏んだ時に、どちらの効果が顕著になるかという事だが、最終的には後者の方が優勢になることがわかっている。その極端な表れが 擬死反射 apparent death or feigning death という事になる。アランショアの主張は、愛着期におけるトラウマが右脳のストレス処理機構に障害を及ぼし、それがしばしば解離傾向を生む。