しばらくほっておいたが、着々と締め切りが近づいているこの依頼原稿。実は解離性障害の各段階のところまで来て、少し止まっている。定番のように書かれている3段階説というのが、どうもそのままでは受け入れがたい。もちろん総論(建前)として正しいのはよくわかるが、あまりに教科書的なのである。とりあえず書き出してみることにする。
● 治療の各段階
以下に主としてDID の個人療法についてISSDのガイドラインに準拠した3段階をもとにのべる。
第1段階 安全性の確保、症状の安定化と軽減
治療の初期には、何よりも安全、安心な治療関係の成立が大切である。最初は異なる人格の目まぐるしい入れ替わりが生じている可能性がある。この段階においては、患者に安全な環境を提供しつつ、表現の機会を求めている人格にはそれを提供し、それらの人格をひとまず落ち着かせることも必要となろう。治療者は患者とともに、別の人格により表現されたものを互いにどこまで共有することが出来るかについて模索する。時にはそれぞれの筆記したものを一つのノートにまとめたり、生活史年表を作成したりするという試みが有効となる。治療は週に一度、ないしは二週に一度の頻度が求められよう。なおこの段階では過去のトラウマについて扱うことにはこの段階では慎重であるべきであろう。ただしそれがフラッシュバックの形で体験されている際にはその症状の軽減のための方策は望まれる。