共感は色々に定義されているが、一応「reactions of the individual to the observed experiences of another 他者の体験を目にした際に人が示す反応」(Davis,MH (1994) Empathy. Madison, WI:Brown and Bebchmark)ということらしい。
共感 empathy は独語 Einfühlung ("feeling into" something)の直接の訳語だと言われる。いくつかの類義語があるが、sympathy, empathic
concern, compassion は、必ずしも同じ気持ちを持つというわけではない。これらの気持ちは、ある感情を持つ他者に対する気持ちである。Feeling for つまり悲しい人に対して悲しくなるのは sympathy だけということになる。
ここでToM(心の理論)に関する論文を少し念入りに読んでみる。
Dvash,J,
Shamay-Tsoory, S. (2014) theory of Mind and Empathy as Multidimensional
Construct. Topics in Language
Disorder, 34.4 pp.282-295.
どうやら empathy について、情動的、認知的と分けることはToMの論者でも常識なのだが、こんなことになっている。
▰ 認知的共感(メンタライジング)
▽ 認知的 ToM ネットワークmPFC(内側前頭前皮質), STS(上側頭溝), TPJ側頭頭頂接合部、temporal pole(頭頂極)
▽ 情動的 ToMネットワーク(vmPFC)
▰情動的共感(扁桃核、島)
この「身にまとう」という訳には苦労した。appropriate には着服する、などの意味がある。では痛みを感じている人の痛みを appropriate するとはどういうことか。もちろんその痛みの質感などは、当人になってみないとわからないが、少なくとも一緒にある種の苦痛を味わう、ということだろう。これが先ほどの gross level での体験ということになる。
さて認知的ToMについてはすでに述べたとおり、mPFC, STS, TPJ,temporal pole が関係している。ここで論文はmPFCとTPJの機能の違いについて詳細に書いているが、難しいので省略(p.286)。
情動的ToMについては、vmPFCがもっぱらつかさどることになるが、面白いことに内側前頭皮質 mPFCが二つに機能分化していると書いてある。
dmPFC 背内側前頭前野 認知的、対人的 interpersonal
vmPFC 副内側前頭前野 情動的、個人内的 intrapersonal
ということらしい。