2021年11月19日金曜日

解離における他者性 49

 p.111 に私が引用したい大切な文章がある。Edelman の主張は、「意識は高度に統合され、統一されている」という事だ。「どの意識状態も統一された全体であり、互いに独立した部分component に分けることが出来ない。CS  is highly integrated or unified- every conscious state constitutes a unified whole that cannot effectively be subdivided into independent components. そしてそれは、同時に極めて高度に分化しているという事だ。At the same time, it is highly differentiated or informative.
 この二つを支える神経プロセスそのものが、統合されていると同時に分化されているという性質を備えているという。そして意識の持つ性質と神経ネットワークの持つ性質が似ているという事は単なる偶然ではないという。
 さてここから Edelman さんは統合という現象が神経ネットワーク内のエントロピーと関係しているという点について解説するが、私はここが一番の勘所であろうと感じるものの、難しくてよくわからない。しかしだいたいこんなことを言っているであろうことはわかる。
 神経ネットワークにおいては下位のネットワークはそれらの間での緊密な連絡と、他の下位ネットワークとのより緩い連携が生じるという形での、一種のピラミッド構造を取っているらしい。そしてそこでの活動は丁度うまく全体のエントロピーの低下を目指して活動するというわけだ。そしてあることが「分かった」時点で、そのネットワーク内にアトラクターが形成され、それを思い出すという事はアトラクターのポケットに入り込むという現象なのだ。丁度パズルが解けずに苦しんでいる時は、脳の神経ネットワーク内で様々な部分がバラバラに働いていて、エントロピーが高い状態だが、それが解けると一気に統合が起き、エントロピーが下がり、すっきりしたという感じを抱く。(そうか、わかるという事に伴う快感はエントロピーの低下を伴っているのだ!)
 ちなみに精神病状態の人に比べたコントロール(正常人)の人々の脳においては、神経ネットワークを介しての神経細胞の結びつきの統合はそのエントロピーがより低下する傾向にあるとも書いてある。