2021年4月19日月曜日

どの様に伝えるか? 解離性障害 1

  また執筆依頼が舞い込んだ。なかなか意図がつかみにくいテーマだが、執筆依頼を承諾してしまった。要するに医師が精神疾患をクライエントにどのように分かりやすく伝えるかというテーマらしい。「実感と納得に向けた病気の説明」、ということだが、どうやらそこに絡んでくるのが「一緒に決めていくこと Shared decision making (SDM)」という概念だという。ざっと調べたところによると、これは昨今のいわゆるインフォームドコンセント(IC)の先を行く概念という事だ。ICはだんだん広まった。でもそれだけでは足りないよ。ということだ。分かりやすく書こう。

「インフォームドコンセントという事でたしかに医者は『こんな風に治療しますがよろしいですか? ハイ、ではこの書類にサインしてください。』となった。以前のように『黙って私の出す薬を飲みなさい』『来週手術をしますよ。(説明なし。)』というのよりはよくなった。でも結局は先生の思った通りの方針になるんだし。もっと分かりやすく、病状の説明も含めてして欲しいし、その時患者の側の要望とか、先生の専門ではない他の方法とかも話してくれていいんじゃないですか?」という事でICのさらに先を行く、別の考え方が必要になったというわけである。ICのさらに丁寧なバージョン、と考えてもいいかもしれない。

全くその通りなのである。ただ医師の立場からすれば、これはとても時間のかかることでもある。丁寧な説明。例えば薬をAからBに変えるにしてもBの副作用のリストアップをして、AからBに切り替えるときにどうするのか、Aを少しずつ量を減らして言って、いつからBの少量を初めて・・・・・。と説明するのには膨大な時間がいる。そしてそのための外来の時間は・・・・・。少しも延ばせないのだ。いや、伸ばそうとすれば出来ないことはない。一人の患者さんに使う時間を倍にすることはできるだろう。しかし日日の患者さんの数は変わらない。そう、SDMを行うためには、医師が扱う患者さんの量が制限されなくてはならない。

 ちなみにSDMがパターナリズムと消費者主義との重複集合という言い表し方になっているのはよくわかる。ICはいわば上から目線の態度(パターナリズム)であり、消費者主義とは消費者優先という事だ。この重複集合にSDMを位置づけることが出来るのだ。

ネットで拾ってきた資料(2016128 Minds フォーラム 2017 日本医師会館)から拝借。

SDMには、治療方針を決める時、互いに相手は何を重要と考えているかを理解するために、患者と医療者の両方の参加が必要です。
 
医療者は、健康に関する問題に向き合うため、患者にすべての治療の選択肢に関する情報を提供します。
 
さらに、患者個人の病歴と検査結果に 基づいて、医学的に望ましいと思われる選択肢の情報を伝えます。
 
患者は、医療者に、病気や治療が自分の人生にとってどのような体験であるかについての情報を提供します。
患者は、「自分の人生にとって、どの選択肢がより良いのだろうか」という見方をします。
 
患者の見解は、医学的に最適な治療と異なる場合があります。
 
患者にとって最良の選択は、医学的に最良の治療法という理由の場合も、その患者の人生のために最高の選択肢だという理由の場合もあるでしょう。
 
患者と医療者は対話を通じて、両者はもとの自分の考えとは違うかもしれない別の見解を理解し、 最終的に患者にとって最良の選択がされたと納得できるでしょう。