「万事休すだな」と思うことはあまりないが、数日前の早朝、本当にそう思った出来事があった。金曜日は私の外来日で、数十件の予約が詰まっているためにそれを休むという事はほぼあり得ないことだ。ところがその日の早朝に原因不明の右背中の痛みに襲われた私はもうそれを回避できないと思った。そして近くのJTD医院のERを訪れることに決めた。ERなど決して訪れることを想像せず、いつも横目で見て通り過ぎていたが、自分が当事者として訪れることになるとは。しかし明け方に始まったかすかな痛みが急速に増して耐えられなくなるという事態では、そのような決心はごく簡単につくものだ。一応私も医者の端くれなので診断を考える。最も楽観的な診断は「尿管結石」あるいは「急性腎盂炎」。でも発熱はないようだから後者はなしか。悲観的な診断ならいくらでも思いつく。
家人に車を出してもらってJTD医院の救急へ。しかしここが分かりにくい。入り口が分からない。救急用の入り口から入り、駐車場の中をグルグル。でも人がいない。よく見ると救急の入り口に、「ご用件のはインターフォンでご用件をお伝えください。」という案内を見つけた。そしてボタンを押して用件を告げると自動ドアが開き、建物の中に。でもそこには誰もいない。どうやら救急は二階らしいので上がっていく。そこにも誰もいない。そこで近くにいた守衛のオジさんに「どこが受付ですか?」と尋ねる。すると彼は受付らしきところを指さす。近づいていくと誰もいないが押しボタンはある。そこにはまたしても「ご用件の方は…」と書いてある。「えー、これを押すの?誰かいないの?」と守衛のオジさんの方を振り返ってもすでにそこに姿はない。どうやら彼はこの役割をいつも負わされていて、最低限の自分の仕事をしたら姿を消す習慣が出来ているらしい。そこでボタンを押すと、しばらくして裏のドアが開いて受付と思しき眼鏡の小柄な女性が出迎える。私の方はすでに口がカラカラになっていてうまくしゃべれないが、「急に背中が痛くなって・・・・」と用件を伝える。その女性は「前もってお電話をいただきましたか?」とか「診察券をお持ちですか?」と尋ねてくる。近くに住んでいるので、直接来ました、などと言い訳をする。はっきり言ってその女性は全く愛想がない。迷惑だ、という感じ。まあその気持ちもわからないではないが・・・・。それにしてもどうやら私の想像していたERとはずいぶん違う。受付の女性に行きつく前にこれほど障害物があるとは思わなかった。(気が向いたら、つづく)