次に現れるシャーロット(仮名)の例。
シャーロットは37歳の女性で、ナイナという女性のパートナーと8年連れ添ったが、最近別れてしまったという。しかしそのつらさに耐えられずに、元のパートナーに電話をしては泣き崩れるということが何度も続いているそうだ。彼女は過剰にかかわってくる母親と、酒飲みで拒絶的な父親のもとに育ったが、両親は彼女が12歳のころに離婚してしまったという。シャーロットは「私のナイナとの関係は、『根源的な結びつき』だったのよ。ちょうど子宮の中で母親と一体となっているようにね。」という。セラピストは「私と彼女が分かれると
if I let this end・・・・」と言い、そのあとを埋めてもらった。シャーロットは「私と彼女と別れると、私は自分を失うわ I lose me」といった後、その意味が分からないといった。「私は彼女の中でばかり揺れ動いていて、自分というものを考えなかったのよ。」それに対して治療者は言った。「もしあなたが彼女になり、そして彼女を失ったとしたら」というと、シャーロットは、「そうね、そういうことだわ!」と叫んだ。そこでインデックスカードにシャーロットに次のように書くように言う。「私の大事な部分があなたになり、それを失いたくない」それを次のセッションまでの2週間の間に何度も読んできてもらった。二週間たって現れたシャーロットは言う。「何か変な感じ。私が二人いて、一人は私のそばにいて、もう一人はナイナと付き合っていて…。でも私と彼女が一緒になるって、死ぬことじゃない?って思うようになり、変な気がするようになったのよ。それじゃうまくいかないわ。」そこで改めて治療者はシャーロットに書いてもらった。「私は彼女と一緒になるといい気持ちかもしれないけれど、もっともっと悪いことが起きるわ。」
これを治療者は繰り返してシャーロットに唱えてもらうことになる。つまり誰かと一緒になることが同時に心地よく、また恐ろしいという考えを何度も唱えるという治療を行うことになったという。